感想
サーバントリーダーシップのセッションでお薦めいただいたので読んでみました。
複雑化する社会で1人のリーダーが成し遂げられることは限られるので、人が相互に依存することを認めて相手を尊重し良好な関係性を構築しましょう、そのためには立場を示すために自分が話し手にならねばという古い習慣を捨てて、自分の知りたい情報を相手が持っているかもしれないと示唆する「謙虚に問いかける」という技術が重要である、みたいな内容でした。
ここでの「1人のリーダーが〜」という話はサーバントリーダーシップとも共通でした。
相互の依存は横だけでなく上司と部下にもあって、でも部下から進言することにおいて壁がありがちなので、それを壊すのは上司の役割という話は納得感があります。
人は観察、反応、判断、介入というサイクルで動くが、それぞれにバイアスや感情による短絡的な判断がつきもの。そこで立ち止まって「謙虚に問いかける」ことで自分の対応の妥当性を自問することで間違った方向へ進むリスクを最小化できるそうです。
傾聴が大事、というトピックをより深く掘り下げてくれた本でした。
ポイントサマリ
第1章 謙虚に問いかける
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一方的に話すことは相手が知らない前提に立ち上から見下ろすことになる
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質問するということは自分を弱い立場に置き、自分が知りたい情報を相手が持っているかもしれないということが示唆される。相手への関心を持っていることを示し、相手に会話の方向づけをする主導権を渡すことになり、それが関係性を作ることにつながる
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今ここで必要な謙虚さ
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仕事においては地位に関わらず依存しあっている
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下から上への進言はタブーな空気が付き物、支援を求めやすい風土を作るのは上の責任になる
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上から謙虚に質問することで知っているけど言えない情報を得ることができ成功につながる
第2章 実例に学ぶ「謙虚に問いかける」の実践
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あれこれ指示をするのではなく、向き合うべき課題を伝え協力を仰ぐ
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単に質問するだけでなく、情報を開示し、尋ねて、考える時間を与えて、判断してもらう余地を与える
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何かを聞かれた時、相手が本当に必要としていることがわかるまで慌てて返事をせず尋ねる
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抽象的でピンと来ない時は具体例を尋ねる
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純粋に疑問を持ったことを問いかけることで、時として適切な質問を導き出す
第3章 ほかの問いかけと「謙虚に問いかける」はどう違うのか
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質問を分類して標準化することはできない
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先入観を排除して会話を進め、自分はなるべく聞くことに専念する
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診断的な問いかけ
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謙虚に問いかけるつもりが実は会話をコントロールしてしまい無理矢理考えさせてしまう
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「何故それが起こったと思いますか」など無理やり引き出すパターン
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謙虚に問いかけるになるかは状況次第
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対決的な問いかけ
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自分が言いたいことを言うために質問という形をとったパターン
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謙虚に問いかけるになることは稀
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プロセス指向の問いかけ
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会話の中身でなく会話そのものにシフトさせる聞き方
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「少々深入りしすぎましたか?」など
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会話が難航してしまった場合などにこのように問いかけることで一旦リセットし、そもそもなんのために話し合っているのか、何を得ようとしているのかを再確認する場合に有効
第4章 自分が動き、自分が話す文化
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その国の文化的背景により、相手よりも自分、関係性よりも課題の遂行に重きを置くことがある
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質問することでものを知らないと思われるのを避けようともする
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しかし課題が複雑になればなるほど、互いに対する依存度は高くなるので、上司は「今ここで必要な謙虚さ」の必要性を認め「謙虚に問いかける」を進んで実践しなければならない
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上司は部下を仕事の対象としてではなく1人の人間として扱われていると実感させてあげる
第6章 「謙虚に問いかける」を邪魔する力
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相手に勝ちたい、自分が得をしたい
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文化による「それを聞いてはいけない」というルール
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観察、反応、判断、介入
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観察においては自分のほしいことにフィルターをかけてしまう。謙虚に問いかけることにより見えていなかったことを知ることができる
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反応においては感情によって短絡的な行動を取ることにより良い結果を見逃してしまう。謙虚に問いかけることにより行動の前に確かめられる
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判断する際に元となるデータが誤っていたり足りなければ間違ってしまう。謙虚に問いかけることにより判断の助けとなる情報が得られる
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介入を間違った判断でしてしまう。謙虚に問いかけることにより、相手に対する偽りのない好奇心や関心を持つことができればミスを最小限に止めることができる
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「謙虚に問いかける」がもっとも必要とされるのは、怒りや不安を感じさせるものを目にした時
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自分の対応がどの程度妥当なのかを自問する
第7章 謙虚に問いかける態度を育てる
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自分が話し手になるという古い習慣を捨てる
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「謙虚に問いかける」を自分にやってみる
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周囲で起きていることにもっと気づく(マインドフルになる)ために、「他には何が起きていたのか」と自問する。結論を急ぐが故に見逃していることに目を向ける
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多様な文化では「あなたの文化的環境では、上司を信頼できるかどうか、同僚と信頼関係を、築けるかどうかは、どうしたらわかるのですか」と尋ねてみる