書評)サーバント・リーダー

 

感想
管理職の主人公が仕事も私生活もうまくいかなくなったきたところで妻に勧められて修道院へ一週間入り、そこでいろんなバックグラウンドを持つ同じように悩みを持ってそこへ来た人たちと、今は修道士となりリーダーシップの講義を受け持つかつての伝説的経営者の元でサーバントリーダーについて話しながら気づきを得ていく、みたいなストーリーでした。
抽象的な話になりがちなトピックですが、ストーリー仕立てになってることでとてもすっと入ってきました。
「リーダーとしてのあなたが作り出してきた環境で、従業員たちは起きている時間の約半分を働いて過ごす」という責任を選択したリーダーがどう振る舞う必要があるのか、努力して備える必要のある技能は何か、結果得られる報酬は何か、といった話は全て自分としても気づきの多い内容でした。
特にサーバントリーダーシップについて、これまで基本として「奉仕し導きましょう」だと考えていたところに対して、「リーダーを選択した時から奉仕し犠牲を払うことが求められ、その行動の結果として権威(影響力)が備わっていく」という視点は新しく、サーバントリーダーシップを実践する目的がよりクリアになりました。
今後も何度か読み返したいと思える本で、うちの部署でも沢山のリーダー的な人たちに読んでもらいたい本でした。
 
ポイントサマリ
 
リーダーが見落としているもの
  • リーダーとしてのあなたが作り出してきた環境で、従業員たちは起きている時間の約半分を働いて過ごす
  • 権力は地位や力で強制する力
  • 権威は個人の影響力によって、自分の意思通りのことを誰かに進んでやらせる技能
  • 権力は与えたりでき、関係を蝕むもの
  • 権力に頼らなければならないのは、権威が崩れたかなかったから
 
殻を破り、逆転の発想を
  • 自分のパラダイムは包括的で不変のものだと思い、新しいことを受け付けずにいると危険
    • 上から下へのパラダイムでは誰もが上司の方を向いていて客を見ていない
    • 監督者が従業員を客と考えて、彼らが何を必要としているのかを見極め、答えようとする
  • 欲求ではなくニーズに応える
    • 親が子供のやりたい放題やらせることは欲求通りにさせること
    • 人により違うニーズはなんなのか常に自問しなければならない
    • 下のニーズが満たされると上のニーズぎ生じる
    • 一番上は自己実現、最高の自分になること
 
奉仕と犠牲とリーダーシップ
  • なんでも賛成する人間や自分に似た人間ばかりをそばに置くな
  • 奉仕と犠牲から影響力や権威が生まれる
  • 意図 − 行動 = 無
    • 行動が伴わないことに意味は無い
  • 意図 + 行動 = 意志
    • リーダーシップは意志から始まる。意図に沿った行動をする
    • 正しい意志があれば愛を選ぶ。この愛は動詞で、正当なニーズを見極めてそれに応えること
    • リーダーは人々のニーズに応える過程で奉仕し、犠牲を払う事が求められる
    • 他人に奉仕して犠牲を払うと、権威や影響力を手にする
    • 人に対する権威を得た時、リーダーと呼ばれる権利をも手にする
  • つまりリーダーシップは、ニーズを見極め、満たす事
 
行為としての愛について
  • ここでの愛とは、感情を抱くことではなく、良き振る舞いをする行為を意味する
  • どう感じるかはコントロールできないが、どう振る舞うかはコントロールできる
  • 相手が感じ悪くとも、自分は忍耐強く、正直に、丁寧に接する事ができる
  • 忍耐とは、自制する事(過ちの指摘におい。て)
    • リーダーとしての仕事は、設定されている基準と実際の仕事の差を指摘する事で、そこに感情は必要ない
    • 訓練とは行為を正して教育する事で、罰することではない
  • 優しさとは、注意を払い評価し励ますこと
    • 人に注意を払う絶好の機会は、積極的に話を聞くこと
    • 積極的に聞くとは、相手の話す間ほんの数分であっても相手の世界に入り込むという犠牲を払う努力が必要
    • 評価
      • 人は探しているものを見つける、選択的知覚
    • 励ます
      • 誠実さを持って具体的に
  • 謙虚とは、信頼でき、虚偽や傲慢さがないこと
  • 敬意とは、他者を重要な人物として扱うこと
    • なぜなら実際に重要だから
    • 人は存在するだけである程度尊敬に値する
  • 遅刻で伝わるメッセージ
    • 彼らの時間の方が大切
    • 私はそれほど重要じゃない
    • その人は正直じゃない、自分で言った事(時間)を守らない
  • 無私とは、自分の必要より優先して、他者の必要に応える事
    • 応えるのはニーズであって、欲求ではない
  • 許しとは、悪いことをされた時に怒りを捨てること
    • 気づかないふりをすることではない
    • 正当に自己を主張する振る舞いをする
  • 正直とは、欺かないこと
    • 真実を話さない、一部を隠すことも欺くこと
    • 欠点について話し合うのを避けるのは不正直
  • 献身とは、選択を貫くこと
    • あなたが発した言質に、全力を傾け続ける行為
    • リーダーとしての真価は、難しい相手のために努力しなければならない時に顕著になる
  • 愛するという動詞としての愛は、メンバーの正当なニーズを見極め、それに応えることによって、人のために努力する行為を意味する
 
メンバーが成長できる環境とは
  • 成長するのは本人の力、人ができるのは健全な環境を整えること
  • 関係の銀行口座
    • 人前で人を罰すると周りの人の口座からも引き出すかとになる
    • 人前で人を褒めると周りの人の口座にも預け入れる
  • 自分の責任範囲においては行為を規制することができる
    • メッセージとして伝えて自らの変化を促す
    • あなたを変えられるのは、あなただけ
    • 人は自らの選択で変わらなければならない。リーダーができるのは人が変化し成長することを選択するよう、必要な刺激を与えることだけ
    • 規制に従わなければその組織に居続けることはできない
 
どう行動するかを選びとるとき
  • 行動をとることで感情がついてくる
  • 違う行動をとりたいという気持ちが強まれば、そうするだろうと考えるが、そんな感情が生じることはあまりない
  • 奉仕する人を愛し、彼らのために努力して、それに合わせた行動をとれば、時間が経つにつれて、その人たちに好意的な見方ができるようになる
  • 相手が〇〇したら、私は変わる、は責任を押し付けており、かついつになるかわからない
  • どのような要因や因果があれど、選択をするのは本人の責任
  • 考えは行動になり、行動は習慣になり、習慣は人格になり、人格は運命になる
 
リーダーにたいする真の報酬
  • 権威を持って導くという訓練を自らに課すことは、個人的なミッションステートメントを掲げるようなもの
  • 人間としての真の目的は、心理的、そして霊的な成熟に向かって成長すること
  • 愛し、奉仕し、他者のために努力する中で、私たちは自己中心的な考えを捨て去っていき、自らが成長していく