書評)みんなでアジャイル

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みんなでアジャイル 変化に対応できる顧客中心組織のつくりかた [ Matt LeMay ]
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感想

手法としてのアジャイルマインドセットとしてのアジャイルの双方が密に繋がっているものとしてのムーブメントとしてのアジャイルが、開発チームだけでなく経営、マーケティング、セールスみんなでアジャイルを実践し価値を生む為に欠かせない、みたいなテーマ(だと思う)。
 
全体を通して僕の印象に残ったのが「なぜ」を考える、目的を考える、という事についてしつこいくらいに言及している事。アジャイルのプラクティスを取り入れるにしても「なぜ」それをするといいのか、何を目的としているのか。そしてその先、何を顧客に届けるのか。アジャイルの根底にある価値と原則を理解する事が職種問わず文化を作り組織を変えていくんだ、みたいなメッセージを受け取りました。
 
あとダイバーシティと並んで使われるインクルージョンという言葉について「誰もが参加して貢献する機会があって、その人が持つ経験やスキルを活用している状態を指す」という話については今の自分の組織マネジメントのヒントを貰えました。
 
ボリュームがそれほどないので内容としてはそれほど詳細じゃないけど、組織の変革に関する「考え方」に色々ヒントを貰えたのと、たまに基本に立ち返るのも大事だな、と思えた本でした。
 
 

ポイントサマリ

アジャイルとは何か?なぜ重要なのか?
  • アジャイルムーブメントは、企業の厳しい条件に反発したソフトウェア開発者の間で同時に起こったもので加速度的な技術の変化に対する反動だった
  • アジャイルは私たちをより良い方向に向かって協働させる
  • 私たちのチームや組織は、採用したプロセスが生み出すのではなく、一緒に働く人たちが生み出すもの
  • 私たちは習慣の奴隷で、多くの組織は従来の仕事の仕方が築き上げてきた総和。アジャイルの原則がそれを避けるのに役立つ
  • アジャイル、リーン、デザイン思考はムーブメントであり、急激に変化する世界において組織はどのようにして顧客のニーズを満たすことができるのかという、類似した根本課題に取り組んでいる
    • アジャイルはベロシティ、プロダクトを市場にリリースするスピード
    • リーンは効率性、製造プロセスからどれだけ無駄を排除したか
    • デザイン思考はユーザビリティ、プロダクトが顧客に提供した価値
 
自分たちの北極星を見つける
  • 解決しようとしている課題や、解決のために従う原則を理解する
  • 正しいプラクティスに従う前に、これまでの何が正しくなかったを確かめる
  • ラクティスを意義のあるものにする為に、ゴールと課題を設定する
    • チームや組織が将来なりたい状態は?
    • 現状は?
    • なりたい状態になれないと思う理由は何か?
  • ラクティスを自分のものにする為に、アジャイルの価値と原則を使って変化を促す
    • 価値と原則をどのように捉えたら、組織のゴールを達成する為に役立つか
    • ラクティスを組織に合わせて特殊化はしても、骨抜きにしてはいけない
 
顧客から始めるのがアジャイル
  • アウトプットより顧客に届ける成果
  • 組織重力の第一法則
    • 組織に属する個人は、日々の責任やインセンティブと整合性がなければ顧客と向き合う仕事を避ける
  • UXや顧客サポート担当が重要な決定の場にいることはない
  • アジャイルは今までと同じものを速くやる方法とみなすと、顧客が違うものを欲しがるかもしれないという本当のリスクから逃れられないかもしれない
  • 包括的なドキュメントよりも動くソフトウェアを
    • 顧客に価値をもたらさない中間状態に費やす時間を減らす
  • MVP
    • 手遅れになる前に顧客の体験を理解して改善できる
    • 顧客を起点にしてそこから戻るように作業する
    • 顧客が利用するときの準備、環境、状況は?
  • 原則
    • 顧客にフィードバックをすべてのサイクルで必須にする
    • 自分たちの「動くソフトウェア」の定義を見つける
      • 各スプリントの終わりに届けてテストするものは何か
    • 今やった仕事を捨てる覚悟をしておく
      • 作る速度よりも顧客の学習を重視する
    • 細部に囚われすぎないようにしておく
      • 正解は多くの試行錯誤から生まれるし状況は変わる
  • 会議のアジェンダ、ドキュメントに顧客のフィードバック、インサイトを登場させる
 
早期から頻繁にコラボレーションするのがアジャイル
  • 例えばコンプライアンスチームと早期に
  • 会議は報告と批評の場ではなく共有と決定のための協調の場
  • 形式的な会議の枠を超えて非公式なコミュニケーションの場を広げる
  • 「温室」のアプローチ
    • 例えばビジネスオーナー、デザイナー、エンジニアを同じ部屋に集める
    • 何を決めるかを決める
    • 会議・意思決定におけるタイムボックスの練習をする
    • 参加者への期待を明確にする
    • 会議と呼ばず、時間の無駄という思い込みから脱出する
    • 同期して行うことと、メールなど非同期チャネルを使い分ける
    • 誰もが参加して貢献する機会があって、その人が持つ経験やスキルを活用している状態を指す
    • 既に取り組んでいる人、動いているものを見つけてつなげる
    • うまくいったやり方を他に適用してみる
  • なぜデイリースタンドアップをやっているかを明確にする
    • チームのゴールに合わせて質問を変えてもいい
  • 下流だけでなく、上流の戦略でもコラボレーションを起こす
  • アイディアや試作を完成し洗練する前に共有する
    • 壊すことに抵抗がない段階で共有する
  • 非同期フィードバックを依頼する際は誰になぜを明確にする
 
不確実性を計画するのがアジャイル
  • 年間計画がある場合でも、4半期ごとなどに学習の機会を取り入れ、年間計画を達成する為に短期サイクルを見直すことはできる
  • 振り返りは最良の学習の機会
  • 定期的に顧客や市場に関する新しい情報を組織全体の人たちと共有する場を設ける
  • 決定を下す際に100%の確実性を要求しない
    • 変化する可能性をプロジェクト計画の一部に含める
    • 意思決定を低〜高インパクト、不確実〜確実でマッピングし、確実なことと重要なことを区別してリスクについて話ができるようにする
 
3つの原則に従い、早くて柔軟で顧客第一なのがアジャイル
  • リーダーがアジャイルを受け入れる為に、アジャイルによって個人が何を得られるかを明確にする
    • 情報の上下の移動で1日を過ごすハブアンドスポークモデルのミドルマネジメント層になるのではなく、機能横断の世界で専門職と肩を並べて働き、彼らがどのように働くかを理解できる学習環境にいることに価値がある
  • エンタープライズデザイン思考の例
    • 内部ベロシティではなく市場でのベロシティをゴールと理解する
    • 企業に共鳴する言葉を利用する
    • 顧客体験を中心として異なる職能の人たちと協業する
    • 組織にプラクティスが適合し、リーダーシップのサポートを得られればプラクティスは自然とチームにスケールする(プル型)
  • なぜ(目的)とどうやって(方法)は分けて考える
    • 考えるボリュームが絞られる
    • 「なぜ」があることで「どうやって」に合意でき実行のガイドになる
    • 「なぜ」はイテレーションの中で再考し、それが変われば「どうやって」も再構成する
  • プロトタイプ・デモへの3つのフィードバック
    • 「なぜ」に合致していて保護されるべきもの
    • 「なぜ」に貢献していないので削除されるべきもの
    • 「なぜ」に対応する為にもっと洗練されるべきもの
  • 組織のリーダーの評価と昇進基準にアジャイルの価値と原則を組み込む
    • リーダーが学習し発揮した経験を語ってもらう機会を設ける
 
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